手形割引と同様に売り掛け取引で現金化する点で類似するものだと、ファクタリングがあります。ファクタリングとは入金までのタイムラグ(支払サイト)がある債権を買取る取引のことです。手形割引は手形割引手数料を金利とする実質的に融資です。そのため手形割引は出資法などの規制を受けるので、金利も安く設定されています。ところがファクタリングはあくまで債権の売買取引であって、出資法などの制限はありません。特に2社間ファクタリングでは実質金利が30%以上も請求される可能性があります。その点、手形割引では、手形割引料は年利換算で数%が相場、手形割引業者でも高いところだと15%で止まるようです。ファクタリングに比べれば手形割引の手形割引手数料のほうが遥かに低くなるのもメリットといえます。
手形割引でも審査があるので、銀行などの融資と同様必要書類を揃える必要があります。融資申し込み時には財務状況を明らかにする直近3年分の決算書や、貸借対照表・決算書なども必要です。審査を通過しても保証人を立てたり、抵当権などの担保権設定を要求されることもあるため、手続きが面倒になります。
これに対して手形割引では申込書に記入し、手形発行会社の商号や本店住所・手形金額などのデータがあれば申込みが終了し審査に入ります。しかも手形割引では審査のための時間も短く、迅速な現金需要にも対応できます。ファクタリングにおいても掛け取引に関する帳簿類などが必須のことを踏まえると、手形割引はファクタリングに比較しても、手間が少ないと評価できます。
手形割引では、約束手形を利用することで起因する特有のリスクがあります。それは手形割引に出した約束手形の支払期日に振出人が支払うことができず、不渡りになるときに顕在化します。手形割引において裏書をした者は後の裏書人や所持人に対して保証責任を負っています。仮に手形割引の対象になっている約束手形が不渡りになると、裏書署名していると手形を買い戻す必要があります。このように振出人の不渡りで償還義務履行の可能性が手形割引での主なリスクです。
手形割引では券面額全額を現金化することになります。必要な現金は小口であるにも関わらず、手形割引を利用すると必要以上の金額でもすべて現金化する必要があるのです。振出人の同意を得ることができれば可能な場合もありますが、原則として手形割引は小口化して現金化するというニーズには対応していないのが現実です。
電子記録債権(でんさい)を利用する。
でんさいの割引も手形の割引と基本的な考え方は同じで、割引業者に譲渡することで債権金額(-手数料)を支払期日より前に受け取ることができます。 紙の手形の割引と異なるところは、必要な分だけ分割(小分け)して割引ができる点です。 紙の手形の場合は、手形の額面に記載の金額を割引しなければなりませんが、でんさいさいの場合はそのような縛りはなく、数回に分けて必要な分だけ現金化することができます。
手形割引は券面額を100%現金化するわけではありません。融資の金利に相当する手形割引手数料などが控除されて現金化されます。この部分が、手形割引に関与する銀行や手形割引業者の収益の源泉になる部分です。そのため手形割引の利用コストと甘受するほかありません。
手形割引において、手形割引料は実質利息に相当するので相場が気になるところです。手形割引で確認しておきたいのは実質が融資であるため出資法や利息制限法などの規制を受ける点にあります。手形割引では都市銀行から地方銀行・信用金庫や手形割引専門業者などが、取り扱っており手形割引料の相場も異なります。一般的に手形割引料は、都市銀行を初めとした銀行では2~3.5%、信用金庫で2.5~4.5%、手形割引専門業者で2.5~15%ほどとなっています。手形割引手数料は手形割引依頼者や振出人の信用性や、支払期日までの期間などにより変動します。ただ手形割引は融資に該当するので、都道府県知事などに登録している正規の事業者を利用するのが必須です。
それでは、手形割引の主要なコストである手形割引手数料を簡単に計算できる方法はないのでしょうか。ここで手形割引手数料を簡単に計算できる方法の公式を確認しておきます。
手形割引手数料=手形券面金額×年利換算した手形割引率×支払日までの日数÷365(日)
となります。
手形券面金額とは手形に記載されている金額のことで、手形割引率とは銀行などの金利相当額のことです。支払期日までの日数を1年間あたりの365日で割っているのは、日割計算して手形割引手数料を算出するためです。手形割引では30.60.90日、というように30日区切りで支払期日も設定されるので、利用する期間も数ヶ月程度になります。そのため厳密に日割り計算して、手形割引手数料を算出する必要があり、最終的に手形割引で必要になるコストの総額は手形割引手数料+銀行などの取立用手数料、で計算することになります
それでは簡単な事例をもとに手形割引料の簡単に計算した事例をしまします
手形割引を希望する手形券面額が1000万円・年利2%・支払期日までの日数90日、取立手数料1000円という場合、
1000万円×0.02×90÷365=49315円が手形割引手数料になるので、
49,315+1,000で50,315円が手形割引手数料として券面額から控除されます。
したがって想定事例で手形割引を利用した場合、簡単に計算すると9,949,685円の現金となります。
手形割引を利用したときは、金融機関から割引料などが控除された金額が振込み依頼人の口座に入金されます。このとき入金額に影響を及ぼすため、割引料には消費税が課税されるかが問題になります。
結論として、手数料は消費税非課税対象とされているので消費税はかかりません。それというのも割引料の本質は消費税の課税対象になるサービスの提供と評価することができず、むしろ割引日から決済日までの機関に対応する金利と評価されているからです。そのため手形割引で手数料に消費税を加算して請求するようであれば担当者に確認するべきでしょう。
手形割引は銀行と手形割引業者のいずれかを選択することになります。同じ手形割引を利用するにしても、どのような違いがあるのかが問題となるでしょう。まず、銀行などの金融機関で手形割引を利用することのメリットは手形割引手数料の安さにあり、手形割引の都市銀行などでの優遇レートでは1%を切ることもあります。
これに対して手形割引業者では手形割引での手数料は高めになる傾向があります。もっとも最近では手形割引の前提になる手形流通量が減少傾向にあり、手形割引業者でも手形割引手数料は低下する傾向にあるため、銀行などとの差は少なくなっています。
そして手形割引ではゆるいといっても審査があります。都市銀行などでは比較的審査が厳しく手形割引利用を拒否される可能性は否定できません。これに対して手形割引業者では手形割引手数料を少し高めに設定してリスクを回避しているので、手形割引の審査も通過しやすいのは確かです。
銀行と手形割引業者のどちらを選択するかは、それぞれの長所短所を意識して手形割引の利用先を判断するべきでしょう。
手形割引で現金化したときには、受取手形について仕訳けすることになります。貸方には受取手形の券面額を記載しますが、借方には入金された普通預金と、手形割引手数料相当額の手形売却損、そして金融機関への手数料を支払い手数料として仕訳けします。
割引手形が支払期日に支払われなかった場合、つまり不渡りになったときは手形を買い戻し、保証債務を履行することになります。これは手形割引した時点では偶発債務(将来において偶発して負担する可能性のある債務)の位置づけに過ぎません。そのため帳簿上で備忘記録を行うになります。
この仕訳け処理を対称勘定法で仕訳するときは、手形割引時に受取手形を直接減額すると同時に、手形割引義務見返と、手形割引義務という対称勘定を使用して備忘記録を行います。
つまり手形割引債務を負担しているので貸方に受取手形の券面額を、借方に手形割引義務見返しを仕訳けします。その後無事手形の支払いがされた場合には、手形割引義務と手形割引義務見返りを対称勘定で仕訳けします。
手形割引で不渡りになった場合に備えて行う仕訳なら、評価勘定法でも行うことができます。対称勘定表では受取手形を直接減額して、不渡り時の偶発債務を備忘記録のために仕訳を行います。これに対して評価勘定法では、割引手形という勘定科目を使用して偶発債務の帳簿上の備忘記録を行う点で異なります。このとき受取手形勘定科目の総額から、割引手形仕訳分を控除した額が手元にある受取手形の真水の部分を意味するわけです。
具体的には貸方に割引手形に券面額を仕訳し、借方には当座預金として実際の入金額を割引で控除された金額を手形売却損として仕訳します。後日振出人が無事手形の支払いを行えば、受取手形と割引手形の勘定科目では対象勘定で仕分けすることになります。
986,792円+送付代金=ご送金金額